高橋 敏之
(更新)
皆さん、こんにちは。
英語学習用の週刊英字新聞『The Japan Times Alpha』編集長の高橋敏之です。
前回は、英字新聞を生活の中に取り入れて「英語のあるライフスタイルを実現しよう」というテーマについて書きました。
※【参考記事】英字新聞で 英語のあるライフスタイルを
今回はもう少し具体的に、英字新聞をどのように活用したらよいのかについてお伝えしたいと思います。
「英字新聞を読んでみたいけれど、どのように活用したらよいのか分からない」
「興味はあるけれど、挫折してしまいそう」
そのような方のために、私がお薦めする英字新聞の活用法を5つのポイントに分けてご紹介しましょう。
時々、読者の方から「『The Japan Times Alpha』を1週間で全部読み切れない」というお便りを頂くことがありますが、結論から言うと全部読む必要はありません。
日本語の新聞や雑誌でも、隅から隅まで全ページ読むことはまれですよね。英字新聞でも同じことです。
見出しを見て、興味を引かれた記事だけ読むようにしましょう。「その記事が日本語で書いてあったら読みたいか」という基準で読む/読まないを決めてしまってよいと思います。
自分が「読んでみたい」と思った英文は、結構スラスラ読めるもの。興味のない記事を無理して1本読むよりも、興味のある記事を3本読んだ方が英語力は伸びますよ。
このように、興味のあるものだけを楽しみながら読んでいくことが、挫折しないで続けるコツです。
英文記事を読んでいれば、当然知らない単語が出てきます。それでも、まずは辞書なしで読んでみましょう。
これにはいくつか理由があって、一つは辞書を引きながら読んでいると、どうしても面倒くさくなって、結果的に英文を読むことそのものをやめてしまいがちだからです。
多少分からない箇所がでてきても、あまり細部にはこだわらずに記事全体の内容を理解することを意識しましょう。ちなみにAlphaでは、難しい単語には日本語の*注が付いているので、これを見れば解決する場合がほとんどです。
もう一つの理由として、単語の意味を文脈から推測する力を養うためです。
英語はわれわれにとって外国語。どうしたって、知らない単語に出合うことは避けられません。こうした単語を、文脈から「こんな意味ではないかな」と推測できる力も、英語の大切なスキルなのです。
毎週1本、自分が最も興味を引かれた記事を選びましょう。先ほど「辞書は引かない」と書きましたが、この記事だけはしっかり辞書を引いて完璧に理解するように努めてください。
このように、「辞書を引かずにサラッと読む」+「辞書を引きながらじっくり理解する」といった2方向からの活用をすることで、さらに力がつきますよ。
次号が届いたら前の号は処分してしまいましょう。
こうすることで、「(上記1~3を)捨てる前に終わらせないともったいない」と自分自身にプレッシャーをかけることができます。
忙しくて読む時間がとれない時には「記事の一文目だけ」を拾って読むようにしましょう。
たいていの英文記事は、画像のように最初に一番重要なことを伝えて、その後細かい補足情報を徐々に出していく「逆ピラミッド構造」で書かれています。
つまり言い換えれば、最初の一文目に記事の要旨が集約されているため、ここを読むだけで記事の概要をつかむことができます。これなら仕事などの予定が立て込んでいるときでも、英文記事に触れることができますね。
※最初の1文目に最重要情報を書くのは、いわゆる「ニュース記事」のみです。それ以外の「読み物記事(旅行案内やインタビューなど)」はその限りではないので、ご注意ください。
以上が英字新聞を読む際の基本的な活用法ですが、ここから先はもう少し発展させて、英字新聞を使った「読む以外のエクササイズ」をご紹介しましょう。
私がお薦めしたいのが、Summarizing と呼ばれる訓練方法。
やり方は簡単で、英文記事を読んだら、その内容を自分の言葉で、英語で要約するだけです。
※ summarize は「要約する」の意。
これだけ聞くと、何だかとても難しそうに感じるかもしれませんが、実際にやってみるとそうでもありません。まず、要約と言っても、美しい完璧な要約を目指す必要はなく、ざっくりと3文程度の短文でまとめるだけでOKです(私はこれを「3文要約」と呼んでいます)。
例えば、「安倍総理、真珠湾訪問」についての英文記事を要約するとしましょう。
以下のように、3つの短い文で内容をまとめます(便宜上、まずは日本語で書きます)。
さて、これをゼロから英語にしようと思ったら大変ですよね。「歴史的な訪問を果たす」「哀悼の意を表明する」「事前の予想通り」などは英語でどう表現したらよいのだろうかと疑問に思う方も多いと思います。
でも一度記事を読んだ後なら、こうした表現が本文中に出てくるので、それらを拝借して要約することができます。つまりゼロから英語を話すよりも、ずっとハードルが低いのです。
ちなみに、上記の3文を英語にすると以下のようになります。
最後に、この Summarizing という活動の最も良い点をお伝えしましょう。
英語に触れて表現を頭に入れることを「インプット」、その表現を実際に自分でも使ってみることを「アウトプット」といいますが、この活動では「英文記事を読む(インプット)→要約する(アウトプット)」というプロセスを経ることで、インプットとアウトプットを同時に経験することができるのです。
例えば上記の中で、「make a historic visit to ~(~への歴史的な訪問を果たす)」「offer condolences to ~(~に対して哀悼の意を表明する)」「as expected(予想されていた通り)」などは、ただ読んでいるだけでは、なかなか自分で使えるようにはなりません。
要約という形で、実際に自分でも使ってみる経験を積む(まさにこれが「アウトプット」)ことで、初めてこうした表現が自分のものになっていくのです。
他にも、細かいことですが「~について謝罪する」という場合、apologize の後ろに for がつながるのをご存じだったでしょうか。こうしたことは知識として頭に入っていても、実際に自分でも使う経験を積まなければ、会話ですっと出てこないものです。
つまり、皆さんお気づきの通り、この Summarizing をすることで、英語の表現力も伸ばすことができるわけです。単に記事を読むだけでなく、ぜひこうした活動を日々の学習に取り入れてみてはいかがでしょうか。
いかがでしたか?
次回は、英字新聞に関する話を一旦お休みにして、世界中で売れている英文法書『Grammar in Use』の活用法をご紹介したいと思います。